中野一輝公認会計士大阪事務所
コラム

 企業幹部の会計学
   減価償却制度の抜本的見直し

 平成19年度の税制改正において、減価償却制度が約40年ぶりに大改正されました。平成20年3月決算期は、その適用初年度ですので十分な留意が必要です。

【制度改正の内容】
 今回の制度改正により、平成19年4月1日以降に取得した減価償却資産については、残存価額(取得価額の10%)と償却可能限度額(取得価額の95%)が廃止され、取得価額の全額を耐用年数の期間にわたって減価償却費として費用化することができるようになりました(実務上は備忘価額1円を残す必要があります)。
 また、定率法の償却率が定額法の償却率の2.5倍とする「250%定率法」が導入されました。
アメリカや欧州各国、韓国等では、耐用年数経過後は取得価額の5%を残さず全額の償却を認めており、今回の制度改正は、こうした諸外国との国際的なイコールフッティングを確保し、企業の国際競争力を強化することを目的としています。


【具体例で考えてみると】
 簡単な例で考えてみることにします。耐用年数6年、取得価額10,000千円の設備を取得したとしましょう。

<定額法>
 従来の定額法は、取得価額から残存価額(10%)を控除した残額に償却率を乗じて計算していました。
 (取得価額10,000千円―残存価額1,000千円)×償却率0.166=償却費1,494千円
 改正後の定額法は、残存価額が廃止されたため取得価額に償却率を乗じて計算します。
 取得価額10,000千円×償却率0.167=償却費1,670千円
 この結果、償却費は従来に比べ毎年度176千円多くなります(償却率も千分の1増えています)。
 また、従来は取得価額の5%相当額(500千円)は減価償却できませんでしたが、償却可能限度額が廃止されたことにより耐用年数を経過する6年目の償却費は1,669,999円となり、備忘価額1円を残して取得価額の全額を費用にすることができます。

<定額法>
 定率法の償却率は「250%定率法」により耐用年数6年の場合、改正前では0.319 でしたが改正後では0.417に増加しました。
 また、通常の償却費が、一定の償却保証額より少なくなる年度(5年目)からはその年度の期首帳簿価額を残存年数で除した金額をその後の年度の償却費とすることにより、耐用年数の期間内に取得価額の全額を費用にすることができるようになりました。
 こうした制度改正のメリットは、早期の償却によって、当初2年間で、減価償却費の額が約123万円増加し、約50万円(実効税率を40%とした場合)のキャッシュフローが増加するといった点にあります。
 中小企業にとっては、減価償却費の額が増えることにより見かけ上の利益は減少することとなりますが、外部借入に依存することなく自己資金で設備投資を行うことができるようになり、経営上好ましいものと考えられています。

<改正前に取得した減価償却資産>
 平成19年3月31日までに取得した減価償却資産については、従来どおりに減価償却を行います。ただし、その減価償却資産の期末帳簿価額が取得価額の5%となった事業年度の翌事業年度から、5年間にわたって5分の1ずつ償却していくことで、取得価額の全額が償却可能となるように併せて改正が行われています。

【最後に】
 中小企業者の場合には、取得価額30万円未満の減価償却資産については、取得時に一時の経費とすることが認められていますので、こちらを選択することが有利となります(ただし、1年度合計300万円までという限度が設けられています)。  また、減価償却資産に対する固定資産税(償却資産税)の評価方法・計算方法は従来どおりで改正はありませんでした。

北國TODAY  2008年春号 Vol.50に載りました

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